( 成幸 ( なりゆき ) ) ん ?
( 成幸 ) 桐 須 ( きり す ) 先生 ?
この 暑い 中 自分 ちの 前 で 何 してん だ ろ ?
あ … どう も さよう なら
♪ ~
~ ♪
( 成幸 ) う わ …
この 前 せっかく 片づけ た のに な んで また この 惨状 に …
( 真冬 ( まふゆ ) ) し … 心外
これ でも 以前 より は 片づける 努力 を し て いる わ
あの … なんで 俺 連れ て こ られ た ん でしょ う ?
あ … あの 虫 が 出 た の
え ? あの 虫 ?
( カサカサ … )
( 成幸 ) あ …
( 真冬 ) あっ !
ああ なん だ ゴキブ …
ダメ ! 不 許可 ! 絶対 その 名 を 口 に し ない で !
はっ はい …
とりあえず 退治 し ちゃ え ば いい っす ね
( 真冬 ) あ あっ
き ゃ ~ !
( 成幸 ) う っ …
な っ ちょ … 先生 ! 放し て くれ なきゃ 退治 でき ない …
ちょ … う う っ
( 成幸 の うめき声 )
と っ 取り逃がし て しまった
( 成幸 ) て か どん だけ 苦手 な ん だ この 人 …
ハア
ひととおり きれい に なった かな
今度 こそ このまま 維持 し て ください よ
当然
もちろん その つもり よ
どの 口 が 言って る ん です か
じゃ 俺 は これ で
( 真冬 ) 待ち なさい ( 成幸 ) あ ?
あの …
まだ アレ が どこ に 潜 ん で いる か 分から ない の よ
何でも する から 私 を 一 人 に し ない で …
何でも ?
え ?
( 成幸 ) やっぱり 桐 須 先生 に 見 て もらう と 勉強 はかどる よ な
これ は これ で 結果 オーライ か
アウステルリッツ の 戦い に 勝利 し た ナポレオン は
ドイツ に ライン 同盟 を … ( おなか が 鳴る 音 )
すみません
( 真冬 ) 夕食 なら さっき 出前 を 頼 ん で おい た から
食べ て いき なさい
え ? そんな 悪い です よ
そろそろ 来る ころ よ
( ピンポーン ! )
( 真冬 ) あっ うわさ を すれ ば
( 成幸 ) 俺 出 ます よ
( ガチャ ! ) ( 成幸 ) は ~ い
えっ ?
( 理 珠 ( り ず ) ) う っ う う …
( 成幸 ) え ~ っと なんで こんな こと に …
( 理 珠 ) きれい な 部屋 です ね
( 成幸 ) 仕事 は い い ん す か 緒方 ( お がた ) さん
ええ ありがとう
( 成幸 ) 片づけ た の 俺 だ けど な
て いう か いつの間に 着替え た ん すか
な っ …
( 成幸 ) す っ すさまじい 無言 の 圧力
何 ? 何 を 訴え かけ てん の ?
や っぱ あれ か ?
天敵 の 先生 と 俺 が 一緒に いる の が 気 に 食わ ない の か な ?
ここ は 正直 に 事情 を …
あ ~ ダメ っす か ? ダメ っす ね
G が 怖い と か 教師 の 威厳 に 関わり ます もん ね
何 な ん だ この 状況
より に よって 相性 最悪 な この 2 人 が 居合わせ ち まう と は
いや これ は むしろ
2 人 を 仲直り さ せる チャンス じゃ ない か
なあ 緒方
いつも み たい に 今日 は 何 か ゲーム 持ち歩 い て ない の か ?
え ?
まっ まあ … いく つ か は
( 成幸 ) よ ~ し ! みんな で ゲーム を やって
アットホーム な 雰囲気 に し て しまえ ば
きっと いい 感じ に 打ち解け て くれる はず
( 2 人 ) ん ?
“ カメ ムシ ” です
“ コウモリ ” よ
ここ … これ は コウモリ で は あり ませ ん
う う … コウモリ …
完勝
これ で 緒方 さん の 30 連敗 目 だ けれど まだ 続ける ?
( 成幸 ) ごめん ! 緒方 が め っちゃ 弱い の 忘れ て た
しかも 先生 の 緒方 へ の 狙い撃ち え げ つね え ~
う っ う う …
( 成幸 ) あ ~ アットホーム と は 程遠い 雰囲気 に …
( 真冬 ) 緒方 さん ( 理 珠 ) あ …
どう し た って 人 に は 向き 不向き は ある もの よ
な っ …
( 真冬 ) コーヒー でも 淹 ( い ) れ て くるわ
( ドア の 開閉 音 )
( 理 珠 ) む ~
あの さ 緒方
その … 何と 言って いい か 分から ん が
本当 は な
緒方 の こと すごく 大切 に 思って る ん だ よ
え ?
今 まで そう は 思え なかった の かも しれ ない けど
素直 に な れ て ない だ けっ つ う か その …
でき れ ば 好き に なって もら え たら って
あ …
そ っ それ って 唯 ( ゆい ) …
桐 須 先生 の こと
は ?
いや ~ あの 先生 すげ え 不器用 と いう か
勘違い さ れ やすい ん だ けど
本当 は あったかく て 生徒 思い の いい 先生 な ん だ よ
え ?
( 理 珠 ) 主語 を 明確 に し て 話し て いた だ け ます か ?
えっ ごめん
しかし 緒方 が 国語 文法 の 指摘 を …
成長 し た な 緒方
( 理 珠 ) あったかく て 生徒 思い ?
( 真冬 ) 笑 止 千万
諦め なさい
( 理 珠 ) とても そう と は 思え ませ ん が …
( 真冬 ) き ゃ ~ ! ( 理 珠 ) あっ
( 2 人 ) あ …
どう し まし た ? 先生
( 真冬 の 悲鳴 ) ( 成幸 ) え ? う わ !
( ドタン ! )
( 成幸 ) いって え …
ちょ … 何 な ん す か !
で で で で …
( 成幸 ) お っ さっき の ヤツ か
今度 こそ しっかり しとめ て …
先生 ど い て もら え ます ?
( 真冬 ) む … 無理 腰 が 抜け て しまった わ
( 成幸 ) どん だけ !
はっ …
で ?
あったかい 先生 が どう し まし た って ?
( 成幸 ) お前 絶対 なんか 勘違い し てる ぞ
( 悲鳴 )
( 真冬 ) 逃げ な さ … 緒方 さん 危ない ! 逃げ なさい !
あ …
あっ 太郎 さん ご 来店 さ れ て ます ね
何 か ?
( 真冬 ) いっ いえ …
( 成幸 ) 飲食 店 の 娘 … 強い
( 真冬 ) 一応 お 礼 を 言って お くわ 緒方 さん
いえ うどん 毎度 あり です
あと 久しぶり に 勉強 を 見 て いただき まし た し
そう いえ ば あなた 難しい 語句 が 目 に 入った 途端
思考 を 停止 する 癖 が 抜け きって い ない わ ね
そんな こと で 本当 に 文系 受験 する つもり ?
今 それ を 克服 する ため に 文脈 から 類推 する 訓練 中 です ので
言わ れる まで も あり ませ ん
( 成幸 ) あか ん ~ !
結局 仲直り 作戦 大 失敗 じゃ ねえ か ~ !
少し 意外 で し た
先生 太郎 さん が 苦手 だった ん です ね
あの ころ は 先生 に 苦手 な もの が ある なんて
知ら なかった
いえ
知 ろ う と も し て い なかった 気 が し ます
( 成幸 ) あの 人 かなり 苦手 な もの だらけ な 気 が する が な
だから もしかすると …
( 成幸 ) ん ?
( 成幸 ) 本当 は あったかく て 生徒 思い の いい 先生 な ん だ よ
( 理 珠 ) 私 が 見よ う と し て い なかった だけ で
そんな 一面 が まだ たくさん ある の かも しれ ませ ん ね
え ?
唯 我 ( ゆい が ) さん が い なかったら きっと …
そんな こと を 考え も し ませ ん で し た
( 成幸 ) 作戦 大 失敗 って わけ で も なかった の か な
ところで 唯 我 さん
私 の 家 に 太郎 さん が 出 た とき に も 同じ ように 助け に 来 て くれ ます か ?
え ? それ 俺 行く 意味 ある ?
さっき の 手際 を 見る に 緒方 は 自分 で 退治 で きそ …
あっ あれ ?
俺 また なんか 変 な こ と 言った ?
( 理 珠 ) む ~
( 花枝 ( は なえ ) の せきこみ )
( 花枝 ) だ … ゴホゴホッ 大丈夫 よ 成幸
この くらい の 風邪 何でもない って ば
何 言って ん だ 40 度 近く 出 て ん のに
( 葉月 ( はづき ) ) 母ちゃん
( 和樹 ( かず き ) ) 寝ろ
( 花枝 ) けど あんた 勉強 も ある でしょ う ?
いい から 寝 て ろ って の
そう だ !
寝ろ !
( 成幸 ) 母 さん の 仕事 の 代役 は
俺 が しっかり こなし て み せる から さ
( 2 人 ) 兄ちゃん かっこいい
( 成幸 ) そう だ ろ そう だ ろ
ハハハッ … から さ !
( 成幸 ) と は 言った もの の
俺 母 さん の パート 先 って よく 知ら ない ん だ よ な ~
確か この 辺 で …
店名 は “ ラグジュア ・ ジェリー ”
ここ ?
( 店長 ) いや ~
来 て くれ て 助かった よ 成幸 君
人 手 が 足り なく て ね
花枝 さん … お 母 さん の 具合 大丈夫 ?
はっ はい 明日 に は 復帰 する と 言って ます
そう よかった
( 成幸 ) それ より ここ 男 が 入っちゃ マズ い 店 な ん じゃ …
( 店長 ) あ ~ 大丈夫 大丈夫
ここ の お 客 さん おば 様 が 多い から
若い 男の子 なら かえって 喜ば れる って 多分
( 成幸 ) いっ いや でも …
アッハッハ 恥ずかし がって かわいい な
う ~ ん …
よし それ じゃあ こう しよ う
お ?
( 成幸 ) ん っ ん ~ ?
この モール の マスコット キャラ “ ワン ころ 花子 ( は な こ ) ” よ
これ なら 恥ずかしく ない でしょ
( 成幸 ) いっ いや そう いう こと じゃ …
って あれ ?
声 が 出 ない ! ( 電話 の 着信 音 )
( 店長 ) ん ?
はい ラグジュア ・ ジェリー
あら 娘 の 保育 園 の …
えっ ! 娘 が 熱 出し た ?
分かり まし た すぐ 行き ます
ごめん 成幸 君
仕事 は さっき 説明 し た とおり だ から
あと よろしく !
( 成幸 ) ん ~ !
( 店長 ) 待って ろ よ 娘 ~ !
( 成幸 ) あんた が 待って ! 店長 さ ~ ん !
ウソ だ ろ おい …
落ち着け 唯 我 成幸
俺 は 今日 母 さん の 代わり で 来 て いる こと を 忘れる な
言う なれば 唯 我 家 の 命運 を 背負って いる の だ
帰り たい など と 間違って も 考え て は なら ない
( うる か ) この 店 大きい サイズ でも かわいい の 多い から
一 度 リズ りん 連れ て き たかった ん だ ~
助かり ます 武 元 ( たけ もと ) さん
( 成幸 ) 帰 ろ う
文乃 ( ふみの ) っち も 来 られ たら よかった のに な
文乃 も いろいろ 忙しい の でしょ う
( 成幸 ) 無理 だ
いくら 何でも これ は 無理
みんな ふがいない 兄ちゃん を 許し て …
あっ 店員 さ ~ ん !
( 成幸 ) ん っ
この 子 の カップ サイズ 測って もらって も いい です か ?
( 成幸 ) ひ い ~ !
まったく この 期 に 及 ん で ブラ の サイズ が 合わ なく なる と か
一体 どこ まで 膨らむ 気 だ ? その 物体 は
たっ 武 元 さん 声 が 大きい です
アハハッ いい じゃ ん 店員 さん しか い ない ん だ し
( 成幸 ) わ ~ わ ~ ! 聞こえ ない 聞こえ な ~ い !
か っ かく なる うえ は しかたない 着 ぐるみ を 脱 い で 事情 を …
( 成幸 ) ん っ ん っ ん ~ ?
( 成幸 ) 届か ん ! ファスナー に 手 が … 脱ぐ こと あた わ ず !
( 2 人 ) ん ?
あ ! 分かった
( 成幸 ) え ?
店員 さん 新人 さん な ん でしょ ?
それ じゃ 分か ん なく て も しょうがない です よ ね
( 成幸 ) たっ 助かった …
( うる か ) 心配 し なく て も 大丈夫 です って
( うる か ) はい ( 成幸 ) ん ?
あたし も 一緒に 手伝い ます から
( 成幸 ) え ?
( うる か ) まず メジャー を トップ に 合わせ て 斜め に なら ない よう に …
( 理 珠 ) ん ん …
( 成幸 ) ひ ゃ ~ !
無 だ 無 に なる の だ 俺 は ただ メジャー を 持って いる だけ
数字 以外 の こと は 何 も 考える な !
わ っ すげ ~ ! 91 センチ だって
( 成幸 ) きゅう じゅう いち …
ん じゃ 次 アンダー は …
( 成幸 ) きゅう じゅう いち …
どう し た ん でしょ う ?
慣れ ない 仕事 で 緊張 し てん の かな ?
( うる か ) あの ~ 店員 さん ( 成幸 ) ん ?
こう いう セクシー な の と
こう いう 清 楚 ( せ いそ ) 系 と
どっち が 売れ て ます か ね ?
て いう か 高 3 くらい の 男子 って どんな の が 好き な の か な って …
( 成幸 ) う っ …
いや 誰 か に 見せる 予定 なんて ない ん です けど …
( 成幸 ) あ あ ~ !
ハア ~ !
( 成幸 ) ん っ !
お っ ! 清 楚 系 が お 勧め な ん です ね
じゃあ こっち に し よっ か な ~
いい 買い物 し た ね
( 理 珠 ) はい
( うる か ) よかった よかった
( 成幸 ) すま ん 武 元
なんか 少し 私情 が 入って しまった 気 が する
( 真冬 ) 失礼
少し いい かしら 店員 さん
( 成幸 ) 先生 ~ !
少々 頼み にくい の です けれど …
( カーテン が 開く 音 )
( 真冬 ) ホック を 外し て もら え ない かしら ?
その …
サイズ が 合わ なかった よう で ギチギチ に …
( 成幸 ) わ ~ 先生 ! すみません !
見 て ませ ん ! チラッ と しか 見 て ませ ん から !
( 真冬 ) 火急
あまり このまま モタモタ さ れる と 恥ずかしい の だ けれど
( 成幸 ) ん ~ !
( 成幸 ) あ あ ~ !
( 真冬 ) 早く し て
( 成幸 ) な … 何 だ これ ?
なんで 俺 ランジェリー ショップ の 試着 室 で
先生 の ブラ の ホック 外し てん の ?
あっ あれ ? 外れ ない ?
どう なって ん の これ ?
さっき から いやに 手間取って いる けれど
店員 さん まさか …
( 成幸 ) バ … バレ た ?
( 成幸 の 荒い 息遣い )
この ブラ 私 が 付け た せい で 壊れ て しまった の かしら ?
( 成幸 ) 大丈夫 だった ~ !
あっ 外れ た
よかった 壊れ て は い なかった の ね
ありがとう 店員 さん 助かった わ
( 成幸 ) に ゃ ~ は は ~ ! こっち 見 ちゃ ダメ ~ !
( 真冬 ) あっ
いけ ない ブラ が 落ち て しまった わ
( 成幸 ) あ ~ !
( 成幸 ) ドッと 疲れ た
働く って 大変 な こと な ん だ な
けど まあ
さすが に これ 以上 知り合い が 来る なんて こと は …
もう 驚か ん ぞ
( 文乃 ) よし あの 2 人 は 帰った みたい ね
フウ
りっち ゃん うる か ちゃん
せっかく 誘って くれ た のに ごめん ね
でも 下着 だけ は 1 人 で ゆっくり 選び たい 派 な の
と いう か 分かって
2 人 と 一緒に 下着 を 選ぶ と か それ もう 拷問 の 域 な ん だ よ ~ !
そんな わけ で 今日 は
お ひと り さま で 思いっきり 気兼ね なく …
あの ~ すみません
これ と それ と あれ の A サイズ
試し て み て も いい です か ?
( 文乃 ) あの ~ ( 成幸 ) ん っ ?
これ と 同じ の の B サイズ と 一応 C も 試し て み て いい です か ?
あ ~ いや サイズ は いつも A な ん です けど ね
もしかしたら …
もしかしたら 大きく なって る かも しれ ない し
人 と し て 常に 可能 性 は 追求 す べき か な って
( カーテン が 閉じる 音 )
( 文乃 ) よ ~ し 頑張れ 私 の 可能 性 !
( 店長 ) ご め ~ ん 成幸 君 !
お 店 見 て て くれ て ありがとう
娘 実家 に 預け て き た よ
それ 一 人 じゃ 脱げ ない から 大変 だった でしょ う
( 成幸 ) うん うん うん !
アハハッ や っぱ A で し た
( 店長 ) ギャハハ ! 汗だく ( 文乃 ) これ くだ さ ~ …
( 成幸 ) あっ
神 は 死 ん だ よ 唯 我 君 …
あ あっ
古橋 ( ふる は し ) ! まっ まず は 話 を …
わ ~ ! 目 が 死 ん でる ~ !
しっかり しろ ~ !
♪ ~
~ ♪
う う …
( 成幸 ) う ~
( 文乃 ) まあ 事情 は 分かった けど
バレ た の が 私 で まだ よかった ね
ほか の 2 人 だったら 大変 だった ん だ から ね !
え ? なんで ?
教え ない
女心 練習 問題 その 5 だ よ
( 成幸 ) え ~ ?
( あ すみ ) 次回 「 か の 新 天地 にて 」
「 迷 える 子 羊 は [ X ] ( エックス ) と 邂逅 ( かいこう ) する 」